移動湖を追って

categoryフィクション — S.S a.k.a fukigen @ 2007/7/22 18:18

070722
 砂礫の大地は遠景を縁取る薄墨のような稜線に囲まれ、そこまではおよそ目につくような起伏すらない。風向きの変わらない風が吹いている。車窓から頭をとびださせたときに聞くような風鳴りが、耳朶のあたりにいつもある。その風はいつも乾いている。空はとても高く希薄で深くつかみどころなく、きっと細い雲の掻き傷は画用紙の上、描けばたちまち水の上に、じんわりと滲みだしてしまうのだろう。
 カプラーを外したトレーラーのアルミ荷箱のなかに三台の洗濯機がならんでいる。三台とも稼働中で、回転が反転するタイミングが同調したり、また思い思いになったりしている。野外では水中ポンプに電力を供給するためのジェネレーターがか細く一定なそのエンジン音をきかせている。ポンプは大地の裂け目さながらの断層から吹き出す地下水の溜まりに沈めてあり、キャラバンがこのあたりに駐屯するときにはいつも決まって、この水源を利用している。
 荷箱の床にアンカーで打ちつけたコカコーラの赤いベンチに腰掛けながら、ぼくは観音開きの外に広がる壮大な大地に目をやった。打ちこんだパイルにつたわせたナイロンの紐に吊りさげた洗濯物が、こちらへと曲線の腹をみせている。それは決して翻ることはなく、いつまでも緩慢な上下を繰り返しているにすぎない。組んだ膝の上に載せたポルノ雑誌に視線をもどすと、瞳孔が緊張を解くまでの幻惑が去ったあと、テンガロンを被った白人の女が、大きな酒樽に肘をつくその姿がだんだんと浮かびあがってきた。 (more…)


バターチキンカレー(覚え書き)

category粗食&ぐるめ — S.S a.k.a fukigen @ 2007/7/21 18:57

070721a ウェブ上のいろいろなレシピを参考にようやく自分なりに納得のゆく味が作れるようになったというこのバターチキンカレー。これまでモブログのほうに何度か画像をあげたことはあるもののレシピはまだだったんで、自分の覚え書きという意味も含めこのさいここに書いておきます。ってなにせしばらく手をつけずにおくとすぐに忘れてしまうたちなんでね。
 まずバターチキンカレーについて簡単に説明すると、これはズバリ、カレーでありながら辛くないです。カレーの甘口、ってのともまた違う。トマトとチキンの風味と生クリームのコクが中心になった、なんとも異質なカレーであります。そこにほんのりバターの香りが漂うような、薄口な味わい。
 食べ方としてはどうやら、パンやナンにあわせるのが本道のようで、そのような記載はレシピ完成までの下調べで何度か目にしました。ご飯にかけて食べるときは、お米が浸るくらいたっぷりかけると美味しい。冷凍ピラフなんかにかけて食べてもまた美味い。と能書きはここいらにして、そろそろレシピ。 (more…)


ライティング漸く波に

categoryライティング — S.S a.k.a fukigen @ 2007/7/7 22:51

070707
 もうかれこれ五年くらいはいぢってんじゃないかという私の著作、「ファースト」の校正が漸く波に乗り始めた。これまでも確かに校正作業については取り組んでいたにしろ、どうにも書き上げたものの高さに自分自身が追いつけなくて、小手先程度の作業を行うのがやっとだった。それがここへきて一気に作品を纏め上げる力というものを手にすることとなった。転機の直前は、昼夜の別なくアルコールに浸かるという数日間があった。
 第一部は今日の作業でほとんど纏まったと思う。校正作業というのは私の場合、パラグラフごとの飛躍と連結を均等にすることと文体のブレを限界まで抑えることを重要視するのだけれど、文章というのはもちろん思考と不可分な訳で、大量のテクストを読みながら、読み手という仮想的で絶対的な見地を維持したまま不適当箇所とその解決策を推敲するというのはなにより精神的なタフさを要求されるので困難なものになる。あまつさえこのオレ様ときたら、時の洗練というものも意識して、100年耐性、同時に翻訳耐性まで考えてしまっているというから驚きだ。見据えてるものの高さがまるで常識的でない。でも必ずこのクオリティーを妥協せずに完成させる。
 ともかく第一部の校正はこれで終わったと思う。第一部は草稿の段階で、実は書き出しに2000字程度の口上文があったものを全て削除して書き直したので、導入の方法をそっくり取り替えるというけっこう大がかりな作業になった。草稿の段階では、戯曲冒頭の口上がなんか格好良く思えたんだよね。けっきょく理屈っぽくて作品の芸術性を損なわせるという判断で無しにしたんだけれど。
 実は三部に分けているのは校正作業を区切るために便宜上行ったものなので、完成した作品は一続きで章だてにもなっていない。で便宜上の次なる二部、これは簡単に終わると思う。問題は第三部、まー、いまの自分ならやりきれるだろうと楽観しているけど。

 ちなみにタイトルが以前のファウストからファーストになってるはラテン語のファウスト(祝福される)という隠喩を漸く棄てる気になれたから。ゲーテの戯曲とまるで関係ないのに、しかも著者自身がラテン語なんて微塵も知らんのに固執してもしょうがないので。ファウストの段階から、ファーストが本意だったてのもある。ファーストの方がだんだん良い響きにも思えてきた。


観にいきますともハイ(ダイハード4.0)

category映画ネタ — S.S a.k.a fukigen @ 2007/6/2 20:20

070601a 今更いうことでもないが、このシリーズでなにより新しかったのは、ブルース・ウィリス扮するジョン・マクレーンの人間臭さ、比較に持ち出すならケビン・コスナーなんかが主演するものなどの二の線のヒーロー像に対極する、親しみ深いヒーロー像、これに限るだろう。もちろん脚本もエンターテイメントの神髄を感じさせる展開で、シリーズ通して多少のゴリ押しさえ気にならないほどの連続性で息をつかさない。その上どの作品もヒューマンドラマ的な登場人物との絡みがあり、ちょっとした端役まで実にキャラクターが立っている。「ダイハード3」のダンプの運ちゃんなんかけっこう好きだ。
 こんかい邦題はダイハード4.0となっているけど、原題は「Live Free or Die Hard」であったりもする。4.0なんてつけたのは今作のシナリオがサイバーテロを扱っているので、アプリケーションなんかのヴァージョン表記を思わせるものを衒ったのかもしれない。4.1とか4.2なんてのが続けてでることはもちろんないだろう。個人的にこの邦題は、すごく格好悪い、ってのが正直なとこだ。つーかどう考えても。 (more…)

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